公開講座「ケーススタディからみる女性の起業とその意義」を「アントレプレナーシップ」の授業で開催しました。
2024年1月11日に「ケーススタディからみる女性の起業とその意義」をテーマに公開講座を開催しました。この公開講座は、従来、3,4年生を対象とする科目である「アントレプレナーシップ」(担当:藤野洋サービス経営学部教授(専攻:中小企業論、ベンチャー企業論、SDGs(持続可能な開発目標))の第13回授業に有識者2名を招聘して講義をいただく中で、地域の方にも参加を呼び掛けたものです。
先ず、株式会社日本政策金融公庫総合研究所(以下、「日本公庫総研」)の主席研究員であり、(特に女性の)起業について多くの調査・研究をご発表されている桑本 香梨(くわもと かおり)氏が「女性の起業と起業への関心」とのテーマで講義を行いました。
<桑本主席研究員の講演のアジェンダ>
ご講演では、金融業という「産業」に属すとともに政府金融機関として「公的機関」でもある「1.日本公庫について」どのような役割・業務を担っている機関なのかについてご説明いただいたのちに、これまでの桑本主席研究員のご研究を基に「2.増える女性の起業」「3.女性の起業の意義」「4.壁を乗り越え起業した女性たち」について、日本公庫総研が毎年実施している「新規開業実態調査」などのアンケート調査や公的な統計、および多くの事例を基に女性の起業家が増えていることや起業の費用が少額化していることをご説明いただきました。また、(女性の)起業の増加の背景には、意識の変化、支援の充実、ネットの普及などがあるとのご説明もいただきました。
<桑本主席研究員の講演資料の一部(1)>
<桑本主席研究員の講演資料の一部(2)>
さらに、女性の起業の事例からは、社会参加や孤立しがちな女性(特に、育児期の母親)のつながり作りに対する意識の高い起業家や金融機関の職員から工務店の経営者に転身して女性ならではの視点で提案を行っている起業家、白髪染め専業といったニッチマーケット(すき間市場)の開拓によって地域社会にとって意義の高い事業を行っている起業家、全国に事業を展開しつつある起業家など、女性起業家のますますの広がりや発展が期待されていることが分かりました。
<ご講演中の桑本主席研究員>
ご講演の最後には、次のようなまとめをしていただきました。
(まとめ)
◆女性の起業は増加、事業規模は男性より小規模な傾向にある。
◆女性による起業の意義は、女性の活躍の場の拡充、女性の雇用創出、女性ならではの発想による新産業創出などさまざまな状況にある。
◆資金、知識・ノウハウ、社会的ネットワークの不足などが特に女性の起業意識のハードルになっている。
◆女性起業家は、独自の取り組みに加えて、周囲のサポートも得ながら、柔軟に壁を乗り越え起業している。
<桑本主席研究員の講演を聴講する学生>
続いて、狭山市ビジネスサポートセンター(Saya-Biz)のセンター長である小林 美穂(こばやし みほ)氏に「選択肢としての『創業』」との演題で、ご自身のご経歴も交えてSaya-Bizが行っている狭山市での起業支援の取組とその事例についてご講演いただきました。
<小林センター長の講演資料の表紙>
具体的には、「5+1のキーワード」に基づくご自身の自己紹介、「行列のできる無料経営相談所」であるSaya-Bizのご説明、Saya-Biz創業相談件数が増加傾向で推移していること、併せて多くの支援事例についてご説明いただきました。
<小林センター長の講演資料の一部(1)>
<小林センター長の講演資料の一部(2)>
<小林センター長の講演資料の一部(3)>
加えて、「究極の自己実現」である創業について、壮大な目標、緻密(ちみつ)な計画、実際の行動の重要性について熱く語っていただきました。
ご講演の最後に、人生100年時代の中で受講生の人生を1日で例えるとまだ早朝であることから、「選べる」人生を楽しむことの重要性とその中での「選択肢としての『創業』」について受講生に貴重なメッセージを発信していただきました。
<ご講演中の小林センター長>
<小林センター長の講演を聴講する学生>
最後に、藤野教授が桑本主席研究員と小林センター長に補足的な質問を行い、全体を総括し終了しました。
<桑本主席研究員と小林センター長に質問する藤野教授>
日本が直面している産業構造の変化によって、働く個々人のキャリアパスの選択肢も多様化しており、今後社会人として本学を巣立っていくことになる学生にとって、桑本主席研究員と小林センター長のご講演はキャリアの選択肢としての起業・創業に関する良い学びの場となりました。
なお、この講演の実施に際して、本学SIC(サービスイノベーションセンター)のサポートを受けており、日本公庫総研及びSaya-Biz(産業界・公的機関)と本学(学界)の産学官連携による人材育成としても位置付けることができ、有意義な社会貢献の取り組みにもなりました。